プログラムノート 今村俊博

プログラムノート 今村俊博

今村俊博


◉《数える人》シリーズ

数える行為をシンプルに提示する「数える人」シリーズ。 正しく数えることはなかなか難しい。単純な仕組みを複数用意し、演奏者に負荷をかける。こわばりやぎこちなさなど身体の変化を観察する。
(※以下、プログラムノートはシリーズ共通)

《数えるⅢ》(2017)
初演 2017年1月21日 いまいけぷろじぇくと Vol.5 音楽のバウンダリー|Performer.池田 萠

《数える人Ⅴ》(2018)
初演 2018年6月16日 いまいけぷろじぇくとvol.7 ずれる、ずらす、ずらされる|Performer. 池田 萠、野田裕貴

《数える人 Ⅵ》(2019)
初演 2019年1月27日 いまいけぷろじぇくと vol.8 身体の魅力・無力・戦闘力、ふたたび!|Performer.今村俊博、池田 萠

《変種たちの狂宴》(2010)

初演 2010年 Compositions 関西 第2回演奏会、動画 2020年3月24日 川島素晴 plays… vol.1 “肉体”|Counting, Conducting, Jump Rope.川島素晴、Recitation, Turning Pages, Cooking.今村俊博

作品は、パフォーマー2人が担うそれぞれ3パートの関係性が徐々に変化し、1つに収斂していく。 2010年、関西圏の音楽大学を中心とした団体「Compositions 関西」第2回演奏会への出品作品として作曲。今回、初演時と同じ出演者・担当パートでの組み合わせで10年ぶりの再演である。チラシに記載のあった ”「身一つ」で出来る作品” とはいささか違ってしまい、小道具がいくつも登場することになるが、最終的には「身体」の有り様(とそこから派生する、私が現在の創作活動の主テーマとしている「数える」ことや反復による「差異」)に収斂していく。

◉《Po(se)-tsunen Ⅲ》(2014)

初演 2014年6月15日 in 第5回公演「弧・呼・孤」|Vn.亀井庸州

「Po(se) – tsunen」はソロ作品の為のシリーズであり、「ぽつねん」と「pose」を組み合わせた造語である。
Vn.亀井庸州を今村が共同主宰をつとめる「現代音楽公演 in」にゲストとして招いた際に初演。作品のシステムは《同じ世界を生きてはいない》と近似しており、本作は演奏者が前もって作成した12の素材を12回繰り返す。

トイピアノのためのコンポジションⅠ》(2015)

初演 2015年8月28日 s.b.r. Vol.6 ~不滅!!s.b.r.!!灼熱の夏!!~|ToyPf.木下正道

グループ展「身体のトポロジー」(@東京藝術大学大学会館展示室 2015年7月30日~8月6日)にて出展した インスタレーション作品『それを聴くとき』から派生した作品。 
鑑賞者が壁面に並べる音名が書かれたカードの一覧を楽譜化したもの。1日1曲とし、全5曲からなる小品 である。

◉《同じ世界を生きてはいない —2人あるいは3人のための—》(2016

初演 2016年11月5日 宮里紘規 個展「同じ世界を生きてはいない」特別演奏会|Cl.武蔵隆一、Vn.亀井庸州、ToyPf.細貝 柊

現代美術家・宮里紘規の同名個展「同じ世界を生きてはいない」特別演奏会にて初演。 特定楽器のための作品ではなく、1オクターブ以上の音域を有する楽器であれば任意の組み合わせで演奏できる。これまで、〔Cl. Vn.〕〔Cl. Vn. ToyPf.〕〔Bass Cl.デュオ〕で演奏されている。Vn.ソロ《Po(se)-tsunen Ⅲ》と作品のシステムは近似しているが、各パートが独立しているため、より複雑である。
演奏者は時間をカウンターやストップウォッチなどで共有し、各自が予め用意した素材をルールにもとづいて演奏する。

◉《読む人 Ⅱ》(2016)

初演 今村俊博×池田 萠 Vol.3 《ふじもとくんといっしょ!》名古屋公演|Gt.藤元高輝、Speaker.池田 萠

音楽とは時間そのものである。そんな当然のことをずっと考えてきたし、考え続けている。最近では、作品を構成する要素や装飾を削ぎ落とし、最低限のルールで構築するようになった。より単純化に向かっている。今作でも、パフォーマーをコントロールするルールはとても単純である。どの音を演奏するのか、どのような奏法で、音量は etc.
本作は時間だけが明確に規定されている。しかし、音、音量、奏法 etc.は選択肢の中から奏者がカードなどを用いて決定する。厳格に構築/構成された時間に比して、奏者に委ねられている演奏内容は些か緩慢である(しかし、それでさえルールに基づいて決定されている)。 どこまでが書かれたもので、どこからが個人のクセ(あえてこういう言葉を使うが)なのだろうか。 どこまで厳密に記したとしても、それはある種「即興」的に響くかもしれない。どこまでも緩慢に記されていても、しかしそれは「厳密に書かれたもの」として響くかもしれない。本作はクラシックギターと発話者/エレキと声楽家という2つの組み合わせのどちらかを選べるようになっている。

◉《Po(se)-tsunen Ⅳ》(2017)

初演 2017年1月30日 川島素晴門下発表会(仮)|Tb.青木 昂

「Po(se) – tsunen」はソロ作品の為のシリーズ4作目。
初演者である青木昂の特筆すべき身体性、彼との出会いから生まれた作品である。「川島素晴門下発表会 (仮)」という演奏会での初演を意識し、師である川島素晴、高校時代の師(いまは兄弟子の関係になった) 井上昌彦へのオマージュ的作品でもある。 

◉《いったり、きたり》(2019)

初演 2019年7月15日 いまいけぷろじぇくと Vol.9《全景》|Tb.青木 昂、Vn.亀井庸州

トロンボーンとヴァイオリンがお互いを行き交う。弱音での演奏や、テンポ設定などにより演奏者は常に緊張状態におかれる。「負荷」や「反復」の手法が違えど、他作品と同様のテーマのもと書かれている。

トリオバージョン
デュオバージョン